サラリーマン時代は決算書を読む必要はなかったものの、
起業すると、そうも言ってられません。
日本政策金融公庫の新規開業実態調査によると、
開業時に苦労したことのうち、
「顧客・販路の開拓」、「資金繰り、資金調達」についで多いのは、
「財務・税務・法務に関する知識の不足」です。
日本政策金融公庫の創業融資を受ける際に作成する創業計画書も
こうした知識が不足していると、むずかしく感じられると思います。
しかし、こうした知識もポイントを押さえてゆけば、
そうむずかしいものではありません。
一度、決算書の見方を学べば、その知識は、その後の創業計画書の作成に
役立つだけではなく、経営課題の抽出や税務申告など幅広く活用できます。
そこでこれから起業し、日本政策金融公庫の創業融資も検討している方向けに、
決算書の簡単な見方を解説したいと思います。
決算書は会社の財産・債務をまとめた貸借対照表と、
利益をまとめた損益計算書を主にさします。
日本政策金融公庫の創業計画書では、
「必要な資金と調達方法」が貸借対照表にあたり、
「事業の見通し」が損益計算書にあたります。
損益計算書の一般的な雛形は上記の通りです。
売上総利益とは、俗にいう「あらりえき」です。
営業利益とは、本業での利益を指します。
経常利益とは、本業での利益に利息などを加味したものです。
当期純利益とは、営業利益・経常利益から税金をひいたものです。
日本政策金融公庫の創業計画書では、
売上から、売上原価と経費をひいたものを利益とし、
営業利益・経常利益・当期純利益まで厳密に区分していません。
創業時ということもあり、こうした厳密な区分よりも、
公庫への返済財源がきちんと確保できるかという視点が重視されているようです。
経費には、売上原価と一般の経費があります。
日本政策金融公庫の創業計画書でもこうして
経費を二つに区分しています。
その理由は、
売上原価は売上に比例するのに対し、
一般経費は売上に関わらず発生するためです。
ラーメン屋を例にとりましょう。
ラーメンの原料はラーメンが売れるほどかさむので、売上原価です。
これに対し、
ラーメン店の家賃はラーメンの売れ行きに関係なく発生するので、一般経費です。
次に貸借対照表です。
好調な会社は、一般的に資産が負債を上回っています。
不調な会社は、一般的に負債が資産を上回っています。
日本政策金融公庫の創業計画書では、
自己資金が貸借対照表の資本金に該当します。
公庫からの借入は負債に該当し、
資金の使い道や自己資金とのバランスが創業計画書では、
問われることになります。
これまで損益計算書や貸借対照表の見方を
簡単に見てきました。
ここから簡単な財務分析の仕方にもふれたいと思います。
これを押さえると、創業計画書を作成する際も
役に立つかもしれません。
売上は単価×数量です。
創業時は、事業が軌道にのったときに、
客単価が上がるケースはまれで、
販売数量が増えることのほうが多いようです。
創業計画書の売上計画を作る際も、
情報収集にもとづき、単価と数量の根拠を明かにすることが必要です。
これに対し、
貸借対照表の分析は、
創業時にはあまり意味をもたないようです。
というのも、
貸借対照表の分析は、それまでの利益が蓄積された段階で、
増資をして取引先からの信用力を高めたり
売掛金や貸付金のペースを早めて金融機関からの借り換えに備えたり
することで意味をもつからです。
日本政策金融公庫の創業計画書を書く段階では、
自己資金を確保したうえで、
損益計算書への理解を深めたほうがよいかもしれません。
貸借対照表をじっくり読むのは、
創業してある程度、時間が経ってからでも
遅くないと思います。
日本政策金融公庫のみならず、
他の金融機関も税務署も決算書はチェックします。
とりわけ
過去複数年の動きは、要注意です。
損益計算書の売上や利益が年々上がっていれば
お金は借りやすくなります。
しかし、貸借対照表の役員への貸付金が年々増えていると、
あやしまれるかもしれません。
決算書は税務署に提出するためにも
毎年作成するものです。
日本政策金融公庫の創業計画書を作成し、
起業したあとは、その実績が決算書に反映されます。
これから毎年見るはずの書類なので、
不明な点は、是非とも専門家にご相談ください。