令和元年10月1日から
消費税及び地方消費税の
税率が8%から10%に引き上げられると同時に
消費税の軽減税率制度がはじまります。
軽減税率制度の概要としては
飲食料品や新聞に8%の軽減税率が適用され
これら以外は10%の標準税率が適用される
というものですが
軽減税率のメリット、デメリットとは
どうゆうものなのでしょうか?
軽減税率のメリットとしては
消費増税による
痛みの緩和という点に集約されるようです。
以下、それぞれ軽減税率のメリットについて
考えてゆきます。
軽減税率のメリットとしては
議論はあるものの公平かもしれない
という点です。
消費税の軽減税率制度と
同じような意味合いを持つ制度として
給付付き税額控除があります。
給付付き税額控除とは
低所得者が最低限生活を行う際
必要な支出にかかる消費税額の○○%
分かを所得税から控除し
控除しきれない分は給付するというものです。
軽減税率が消費税率を標準税率より
低めにすることで低所得者対策をするのに対し
給付付き税額控除は
所得税、住民税の減税で低所得者対策を行うといって
よいかもしれません。
ただし、給付付き税額控除をちゃんと行うには
職業ごとの所得の捕捉率を埋める必要があります。
マイナンバーの活用により
今後、職業ごとの所得の捕捉率の格差がなくなれば
現実的な制度と言えるかもしれませんが
現状では
所得を捕捉することなしに
低所得者が恩恵を受けられる点で
軽減税率は給付付き税額控除よりも
メリットがあるのではないかという議論があります。
軽減税率…消費税率の軽減、所得の捕捉なしに実行
給付付き税額控除…所得税等の減税、所得の捕捉が課題
今のところ、軽減税率のメリットとして
所得の捕捉率の差を考慮せず低所得者対策となるとされます。
軽減税率のメリットとしては
低所得者対策として有効だと
考えられる点です。
エンゲル係数というものがあります。
家計の消費支出総額に占める食料費の割合ですが
平成29年の総務省の家計調査報告によると
年収727万円以上の世帯はエンゲル係数が22.5%
年収237万円以下の世帯はエンゲル係数が27.3%
と低所得者のほうが
食料費の占める割合は高いことから
食料品を軽減税率の対象とするのは
低所得者対策として
有効と考えられます。
軽減税率のメリットとしては
消費者の感覚にうったえる部分もあります。
消費税は高所得者でも
低所得者でも税率は基本的に同じなので
低所得者ほど消費増税の際は
痛みが大きくなります。
こうした消費税を支払う側の痛みを
緩和するというメリットも
あると考えられています。
軽減税率のメリットのひとつは
消費税について国民的な議論が展開されるなかで
税に対する理解、関心を高めてもらうことかもしれません。
消費税は社会保障の安定財源として
なくてはならないものです。
こうした安定財源である消費税へ
国民の間で理解、関心が高まらないと
日本社会は危機的な状況となります。
軽減税率のひとつのメリットとしては
こうした税への理解、関心を高めてもらう
きっかけとなる点かもしれません。
日本と同じように
少子高齢化が進むヨーロッパでは
付加価値税の標準税率が20%を超える国もあり
軽減税率を導入することで
社会保障の安定財源の確保に努めています。
日本の将来を考えると
ヨーロッパにモデルをとった
税制をとる必要から
軽減税率のメリットは
将来への備えと言っていいかもしれません。
軽減税率のメリットのひとつは
わかりやすさかもしれません。
消費税の軽減品目は
店頭などで確認できますが
給付付き税額控除の場合
確定申告や自治体への申請等の
手続きをしないといくら税額が控除されるか
は確認できません。
確定申告に慣れた税理士会などの玄人
にとっては、給付付き税額控除のほうが
魅力的かもしれませんが
確定申告をしないサラリーマンなどにとって
軽減税率のほうがわかりやすいのかもしれません。
軽減税率のデメリットとしては
・軽減税率と標準税率の線引きの不透明さ
・事務負担の増加
・軽減税率のもたらす課税の不公平
・政治力に左右される
といったところにあるようです。
軽減税率のデメリットとして
線引きが難しい点があげられます。
ビールは10%の消費税だが
ノンアルコールビールは8%の消費税
みりんは10%の消費税だが
しょうゆは8%の消費税
という線引きについて議論をしていたら
きりがありません。
線引きの難しさは
似たような商品やサービスで
消費税の税率が異なってしまう点かと思います。
この点は
軽減税率の導入後も多くの人の頭を
悩ますことでしょう。
消費税導入以前は
物品税という税目がありました。
物品税では
ぜいたく品に課税していました。
そのため、例えば
コーヒーはぜいたく品だから課税
お茶は生活必需品だから非課税
といったことが行われていました。
こうした課税関係は
消費税の軽減税率の導入にともなう
みりんは10%の消費税だが
しょうゆは8%の消費税
という線引きとなんだか似ています。
ぜいたく品の線引きが行き詰まり
単一税率の消費税が導入されたにも
かかわらず、時代が変わって
軽減税率の導入でまた
似たような議論が復活してしまっています。
軽減税率のデメリットとして
政治力の働く可能性があります。
給付付き税額控除を強く推していたのは
かつての民主党でした。
一方、軽減税率を強く推してきたのは
公明党です。
また軽減税率の対象品目に
新聞が入っているのも
政治力によるといううわさもあります。
軽減税率のデメリットとしては
高所得者ほど受ける可能性があります。
エンゲル係数のうち
食料品の占める割合は低所得者ほど高いですが
食費そのものは高所得者ほど高いです。
軽減税率は食費そのものが多い
高所得者ほど恩恵を受けるという側面もあり
低所得者だけが恩恵を受けない以上
不公平な制度とも考えられます。
軽減税率のデメリットとしては
事務負担の増加です。
経理をとってみましょう。
軽減税率が導入されると
仕入れと売上げのそれぞれで
軽減税率と標準税率を分けなくてはいけません。
また業種によっては
請求書に税率ごとの区分を設けなくてはいけません。
こうした事務負担の増加のもとでは
税金の計算や決算書の作成などにも
大きな影響が出てくる可能性があります。
ヨーロッパで軽減税率が導入されているのは
付加価値税の標準税率が
日本に比べ高いからです。
標準税率が10%の段階で
軽減税率を導入するのは
時期尚早とも考えられます。
消費税の軽減税率制度について
メリット、デメリットを見てくるなかで
この軽減税率制度の是非は
・低所得者として有効かどうか
・課税の不公平感を生じさせないかどうか
という論点の確認とともに
マイナンバーの活用等で
所得の捕捉率が上がれば
軽減税率制度に代わる制度設計も可能ではないか
という議論ももっと展開されるべきかと思います。
消費税は軽減税率制度の導入により
物品税の時代に遡りしてしまうのか
それとも
社会保障の安定財源として時代の主役となるのか
こうした点を
時代の移り変わりとともに
見つめてゆく必要があると感じます。