令和3年2月2日に
国税庁が
申告所得税、贈与税及び
個人事業者の消費税の申告・納付期限を
令和3年4月15日まで延長する旨の
文書が出されたのと
ほぼ同時期(令和3年2月5日)に
「インボイス制度に係る事業者の
登録申請に関する周知等について」
というタイトルで
全国関税会総連合会に
インボイスの周知の依頼をする旨の
文書が出されています。
確定申告の期限が
当該文書が出されて約2か月半後に
来たのに対し
インボイスの登録申請は
当該文書が出されてから
半年以上経つ令和3年10月
ということもあってか
このコラムを書いている
令和3年4月10日時点において
いまだ、インボイスの相談を
受けたことがありません。
専門家の間では
令和5年10月からの
インボイスの交付は
新設法人のXデーのように
とらえられるむきもありますが
実務レベルでは
目先の確定申告が優先される傾向にあり
国税庁が確定申告の延長とほぼ同時期に
インボイスの周知を呼び掛けていたことは
知る人ぞ知るという状況ではないかと
思います。
インボイスの交付が
なぜ新設法人のXデーのように
とらえられるかは、明白です。
インボイスの交付にあたり
新設法人でも消費税がかかるからです。
これまでは
税制改正のたびに
新設法人の設立から2年間の
消費税の免税要件が厳しくなってきましたが
それらは、新設法人の取引先との
利害関係にまで影響を与えませんでした。
ところが
インボイスの交付により
消費税のかかる事業者との取引をしないと
原則的にその取引先は
消費税の仕入税額控除を受けられず
高い税金を支払う可能性があります。
そうなると
最悪の場合、取引してもらえない
こともありえます。
インボイスの登録申請は
事業者の任意ですが
中小企業の取引先の多くは
消費税の課税事業であるという
現実にかんがみて
半ば、強制的になるのではないかと
予想しています。
インボイスの交付後は
新設法人の多くは
設立初年度から消費税を
納めることになり
現時点で会社設立する場合に
比べたら
ひょっとしたら
役員報酬やその他の
固定費を抑えなければならず
会社設立に躊躇する・・・
こうした状況から
インボイスの交付は
新設法人のXデーのようにも
とらえられますが
ここで重要なのは
税理士の役割だと思います。
確定申告の延期を
いくら国税庁が
文書で周知しても
現場の税理士が
電話や対面などで
直に納税者の方に語りかけることで
ようやく、伝わるということは
珍しくありません。
インボイスのように
一見、複雑そうな制度であれば
なおさらです。
もっとも
会社設立に際しては
消費税の免税というより
所得税と法人税のバランスを考慮したり
取引先や従業員が
会社組織を望むからといった
様々な理由で
設立に至ることが多いので
インボイスがあるから・・・
といって
駆け込み需要的に
会社設立を促すのも
ちょっと違う気がします。
そうではなくて
納税者の方と税理士の
ごく自然な対話の流れのなかで
インボイスについても
話をすることが
大切だと思います。
国税庁も
インボイスの周知について
専用ダイヤルを設け
リーフレットを作成し
特設サイトを立ち上げるなど
さまざまな努力を行っています。
税理士の役割は
こうした努力を踏まえながら
税務の現場で
より直接的に
納税者の方に伝える努力を
することかと思います。
多くの事業者が
コロナで大変ななか
確定申告の期限は延長されましたが
インボイスの交付は
延長されていません。
それが事実である以上
税理士として
インボイスへの理解を深めるとともに
地道に周知の努力をして
ゆきたいところです。