毎年12月中旬になると
与党の税制改正大綱が発表されます。
今年(2019年)も12月12日に
令和2年度与党税制大綱が発表されました。
今回の税制大綱では
寡婦控除の要件が変わったり
大企業がベンチャー企業に出資したら
法人税を減税するなどの措置が取られたりしています。
会計事務所に勤務する立場から言うと
あまり実務には影響がないと思います。
税制大綱は基本的に
一握りの与党議員が財務省の役人などと決めるためか
政策目的(経済成長や男女格差の解消など)
が最優先となるようです。
そのためか
その年によって会計事務所の実務への
影響の度合いは変わってきます。
例えば基礎控除の改正がそれにあたります。
2020年から合計所得金額2400万円以下の
個人の場合、基礎控除は
現在の38万円から48万円に上がり
所得税が減税となります。
この基礎控除の引き上げは
平成30年の与党税制大綱により
決められたものでした。
当時の税制大綱の政策目的としては
フリーランスなどが典型のような
働き方の多様性を
基礎控除の引き上げにより後押しすることで
働き方改革を促すというものでした。
与党税制大綱は年により
フリーランスの働き方を応援する制度が盛り込まれたり
未婚の一人親を支援したり
様々な政策目的のもとで税制を変えてゆきます。
税制改正大綱のこうした政策目的の変化は
会計事務所の実務に影響を与えたり
与えなかったりします。
会計人として与党税制大綱に接するとき
税制大綱が
日々の法人税の申告や年末調整などの実務に
影響を与えるどうかを真っ先に気にかかるところです。
与党税制大綱のうち
実務に影響を与えそうな項目は
新聞、専門誌、セミナーなどでフォローします。
その後、必要に応じ、お客様に
税制改正の内容等についてお話しています。
こうした視点で見るかぎり
令和2年度与党税制改正大綱は
子育てや資産形成
大企業といったところに重きを置いているためか
実務には影響が少ないと言えます。
むしろ2年前の平成30年度与党税制改正大綱のほうが
会計事務所に確定申告を依頼する
個人事業主への減税も盛り込まれている分
実務には影響が多いと言えそうです。
もっとも与党税制改正大綱に対する
こうした見方は、非常に偏ったものです。
与党税制改正大綱の基本的な方向性は
日本の社会の変化に
税制が適応してゆくことにあると思います。
情報化が進むなかで
令和2年の与党税制改正大綱では
5G移動通信システムの基地局を
前倒しで整備する電話事業者などに
法人税の減税を行うとしています。
日本の社会が変化しつづける限り
税制は変化するので
与党税制改正大綱を読む視点としては
実務に役立つかどうかではなく
社会の変化に税制はどう対応するか
といった視点のほうが健全かと思います。
与党税制改正大綱は
たしかに一部の与党議員や財務省の役人などが決めているため
国民不在の感は強いです。
しかし
社会が変化してゆく以上
税制も変わってゆきます。
こうした税制の変化は
日本社会の変化の縮図とも言えます。
会計事務所で働いていると
税制改正大綱というと
実務にどうゆう影響を与えるのかのみ気にかかるところですが
それが日本社会の縮図だと考えると
与党税制改正大綱というのも
おもしろい読み物だと思います。