電子帳簿保存法の保存要件を違反した場合
デメリットとして、青色申告の取り消しが、想定されます。
なお、このコラムは
電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和4年6月 国税庁)
をもとに作成しています。
目次
・電子帳簿保存法のメリット、デメリット
・電子帳簿保存法の保存要件違反(令和4年1月1日~令和5年12月31日)
・電子帳簿保存法の保存要件違反(令和6年1月1日~)
・電子帳簿保存法の保存要件違反と青色申告の取り消し
・電子帳簿保存法のデメリットの回避
電子帳簿保存法のメリットとしては
書面による大量の帳簿保存のための
印刷や保管の労力を削減できることにより
事業者の生産性を高められる点等が
あげられます。
将来的に税務調査のリモート化がすすめば
電子取引の要件を満たすことで
税務調査の効率化も期待できる点
電子帳簿保存法のメリットは
今後、拡大してゆくのではないかと考えます。
ただし
電子帳簿保存法のデメリットとして
電子取引のシステム等の整備や社内のワークフローの構築など
準備に困難がともなうことや
保存要件を違反した場合
最終的に青色申告の取り消しの可能性もあることなども
あげられます。
こうした電子帳簿保存法のデメリットについて
検討する際、確認したいのは
電子帳簿保存法の保存要件の違反とは
どうゆうことか、ということです。
電子帳簿保存法の保存要件が違反になるかどうかには
令和4年1月1日~令和5年12月31日までの猶予期間が
与えられています。
この間は
電子取引のシステム等や社内のワークフローの整備等が
間に合わないなどにより
税務署長がやむを得ない事情があると認め
電子データの出力書面等を税務調査の際に提示できれば
要件違反には、ならないとされています。
ところが
令和6年1月1日~は
上記のような寛大な取り扱いではなくなります。
令和6年1月1日~は
やむを得ない事情とは、災害等に限定されます。
電子帳簿保存法の保存要件を満たすために
準備が困難だったから、保存要件を満たせなかった
というのは、通用しなくなります。
電子帳簿保存法の保存要件の違反の最終的な結果として
「個人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」
「法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」
により、青色申告の取り消しが想定されます。
ただし、それは、あくまで、課税庁の最終的な判断であり
電子帳簿保存法の保存要件の違反が即、青色申告の取り消しにまで
いたることはありません。
事務運営指針にもあるように
青色申告の取り消しにいたるには
・帳簿書類を提示しない場合
・税務署長の指示に従わない場合
・隠ぺい、仮装等の場合
・無申告又は期限後申告の場合
など、悪質な場合を総合勘案し
真に青色申告にふさわしくないと判断される場合です。
電子帳簿保存法のデメリットとして
電子取引のシステム等の整備や社内のワークフローの構築など
準備に困難がともなうことや
保存要件を違反した場合
最終的に青色申告の取り消しの可能性もあることなどを
あげてきましたが
こうしたデメリットを回避するには
令和4年1月1日~令和5年12月31日までの猶予期間を
有効活用し
電子取引のシステム等の整備や社内のワークフローの構築など
を整備してゆくことが大切です。
もっとも、それすら、困難な場合
・見読可能装置(パソコン、モニター、プリンターなど)の用意
・調査官からのダウンロードの求めに応じること
・検索機能(ファイル名に規則性を持たせるなど)の備え付け
・国税庁のホームページから事務処理規定をダウロードして加工する
といった
一般の電子帳簿の保存要件を満たすべく
最低限の取り組みを行えば
青色申告の取り消しまでは、いかないのではないでしょうか。
電子帳簿の保存要件には
一般の電子帳簿のワンランク上の優良な電子帳簿がありますが
優良な電子帳簿の保存要件は、一般の電子帳簿よりも多いことから
保存のコストの増加がデメリットとなるおそれがあります。
要するに
電子帳簿の保存要件では
猶予期間があたえられているうちに
一般の電子帳簿の保存要件を守れるようにすることが
コストパフォーマンスがあがると思います。